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『コレクションを手放し、思想を残す。』
これが私の"終活"。
お付き合い頂けますと幸いです。
なお、現在日本で買えない靴(特にオーダー、ビスポーク、ヴィンテージ)を中心に出品致します。
皆様と同じ立場、履き手の立場の人間だからこそ出来ることを精一杯やりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
最もイノベーティブな現代高級靴
ハインリッヒディンケラッカー、初期ルツェルン。(2回着)
東欧靴に独特のデザイン(例えば、RIOに見られるようなトゥの立ち上がりが強いラスト)は、三位一体志向を貫いた結果である。
すると、三位一体志向である点に惹かれて東欧靴を集めたものの、ワードローブが似たようなデザインの靴で揃ってしまうという問題に直面する。
その事は、下記のP軸コラム最終節『ベンダイアグラム思考の靴選びのために。』でも議論している。
ディンケラッカーも同様の問題意識を持っており、三位一体志向を貫きつつ伝統的な東欧靴と異なる印象のラストを作れないかと考えた。
その企画こそ、ルツェルンである。
だが、典型的東欧靴のラストは三位一体志向から導かれたフォルムであるから、意匠上の理由だけで安易にラスト形状を変えることは出来ない。
何度も何度も試作品を作っては実用し、修正を繰り返したそうだ。
まさに、V軸コラムで説いたオートキュイジーヌ型の(経営学の用語で言えばインテグラル型の)開発が行われたのである。
後期アポロ時代から在るということで、BudaやRIOが注目されるが、実は最もディンケラッカーがコストをかけて開発したのがルツェルンだ。
前回までのコラムにおいて、ディンケラッカーのブランド設立当初は、圧倒的有形価値でもって、西欧靴に夢中だった靴好き達を東欧に振り向かせた事を述べた。
そして、ディンケラッカーの工房で完成直後のルツェルンを履いた時、その当時と同じような革命の匂いを感じた。
その予感通り、当時西欧市場で注目されていたグリーン808やクロケット337から、ルツェルンがどんどんパイを奪っていった。
主にタフネス面で懸念があるものの、意匠上の理由で、細見でややロングノーズの靴を愛用していた人々も、ようやく "解" にありついたのである。
自分達の好きな形でありながら、しかし、しっかりと三位一体の靴に出会えたのである。
この点において、ルツェルンは最もイノベーティブな現代高級靴である。